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自転車は生き物だから、年に一度お医者さんに診てもらった方がいいということ。

  • 執筆者の写真: Nezumi Fukuda
    Nezumi Fukuda
  • 2015年4月15日
  • 読了時間: 6分

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”オレも随分痩せちまったけれど、

まあ、君ほどではないか。

次の町まで一緒に頑張ろうか。”

at Calafate en Argentina

割とエクストリームなルートを本編では紹介しつつ、まあ、半分以上は自分の走った自慢なんていうちょっと幼稚なところもあったりしつつも。

それでも、僕がこのページをしているのは、自転車からもらった感動を、自転車にまだ乗れない人に伝えて、その人が自発的に自転車の感動に触れるようになって欲しい。その時にはその人の手助けをしたいというコンセプトでやってます。

そんな割とジコチューなホームページでございます。

初心者から中級の方にかけて。

「自転車は呼吸する生き物である」

ということを知らない人が多いです。

「アホなこと言うな。自転車は無機物だ」

ええ、全くその通りですね。

自転車は無機物でございます。

でも、無機物が呼吸しない。

無機物が生き物でないとどうして言えましょう?

ん? 屁理屈くさい?

でも、本当なんですよ。

呼吸をする部品でもっとも分かりやすいホイールの話をします。

少し昔のツール・ド・フランスの話をしましょうか。

昔って、ホイールは全部手組でした。

今は完組、つまり機械で組みます。

ツール・ド・フランスというのは、世界で一番名誉ある自転車レースです。

一年に一度あります。

21日かけてフランスを一周3000~4000kmほど走ります。

手組しかない時代には、チームのメカニックたちが、

今年のツールが終わった瞬間に来年のツールのためのホイールを延々と組み上げる作業

を始めるんです。

なぜって、ホイールは金属部品で構成されます。

金属って温度によって伸び縮みします。

そしてホイールはズレます。

ホイールを回すとウネウネってすることがあるでしょ?

あれがホイールのズレというやつです。

金属は何度か伸び縮みすると、ある程度安定します。

だから、彼らは、一年間、伸び縮みする金属を修正し続け、ツールに使える安定した状態のいいホイール一年かけて作ったのです。

機械で組むことにより、ホイールの大量生産が可能になりました。

「機械なんて信じられるか」

それは、申し訳ないですが、現代のハイエンドホイールにふれたことのない自転車かぶれの方の考えです。

実際、今でも、素晴らしいホイールビルダーさんはいらっしゃいます

彼らでも、やはり今の完組ホイールはすごいと唸るんです。

興味があれば、「のむラボ」と検索してもらうと手組ホイールと完組ホイールの話をとても理論的に深く、なおかつ分かりやすくしてくれているページにたどり着きます。

興味のある方はどうぞ。

今の機械の組む技術は本当にすごいですよ。

機械は本気だすと本当のホントにすごいですよ。

今のホイール組みマシーンって誤差の設定ができます。

安いホイールは誤差が大きい設定で組みます。

誤差が大きいと、メリットとして、組み上げる時間が短くなる。

つまり大量生産できる。

だから安くなるんです。

逆を言うと、機械は、時間をかけて良ければ、人間の目で見える範囲の誤差以上のことを延々とやり続けることができます

機械すげっ!!

でも、一番すごいのは、機械じゃなくてそういう機械を作った人間たち。

人間の技術であり。

欲求であり。

美や効率を求める向上心だと僕は思っています。

ちょっと傲慢な考えかもしれないですけどね。

話戻して自転車の呼吸です。

自転車たちはシャイなんです。

なんとなく無機物でも呼吸するという意味が分かってきましたでしょうか?

自転車とは無機物の集合体です。

そして、それぞれの無機物がそれぞれに呼吸をします。

しかも割と自分勝手に。

これは喧嘩になります。

有機物は、いくらかお互いに都合のいい妥協点を見つけるということをします。

しかし、無機物って割と自由です。

湿度や温度が変われば、

「あー、オレ伸びてぇなぁー」

「くたびれたから縮むかなぁー」

なんて。

割とみんなわがままです。

だから、自転車屋さんはわがまま奔放な彼らを一番最適な位置にセッティングしてやるのが仕事です。

それぞれの意見を聞いて。

ケンカを仲介してやるんですね。

いい位置に動かしてやったり。

時には油も与えてやります。

時には少し削ることも。

磨くことも。

こいつらが厄介なのが。

「ああ、そこそこ、そこが気持ち良い」

って声をハッキリと言えないんです。

そう、自転車ってシャイなんです。

自転車屋さんはお客様の車体を通して勉強させてもらっているという事実はどうしても受け入れざるを得ないのだろうか?

じゃあ、自転車屋さんは聞こえない声をどう聞き分けるのでしょう?

これは率直に申し上げますが。

実験を繰り返して、声を聞き取れるようになっていくんです。

ごめんなさい。

どんなに優れた自転車屋さんでも、いくらかは実験をいつもやっています。

これってどうなんでしょう。

自分の愛車をモルモットにされるって。

良くない気もしますよね。

でも、逆に、昨今は実験をしない自転車屋さんも増えました。

いじるのを完全にマニュアル化するんですね。

マニュアル化のメリットは、安定した品質と言えば聞こえはいいですが、言い訳が立つんですよね。

特にチェーン店はそうですよね。

「当社の考え方では、こうするのが最良の手段と考えています」

さらに拡大すれば、

「現在の自転車業界の考え方では、このセッティングが最もバランスが取れていて、最良とされています」

そうして、分厚い冊子を数冊見せる。

こうなると、グウの音も出ません

「ああ、僕の方が素人だったのかな」

って。

これはこれで、正直、何だか嫌ですね。

でも、初心者は玄人向けの店に入るのって躊躇しますよね。

(僕もいまだに躊躇しますけどね笑)

まあ、この2つのやり方は一長一短です。

普及すれば自転車全体が進歩する。

・普及よりも、より素晴らしい状態に自転車を調整してやるべきだ。

この葛藤は難しいところです。

普及を馬鹿にしてはいけません。

うまく普及していけば、もしかすると十年後にはロードバイクが3万円で売られている時代が来るかもしれません。

単なる値下げでなく。

需要が増えれば、供給も増やせる。

供給が増やせれば、一台あたりのコストが下げられる。

さらに道路状況も自転車にとって良いものとなっていきます。

僕の考える最も素晴らしい自転車屋さんは。

一度、頑固な職人の道を通って、

それから、ビジネスとして売れる形をやって、

そして、ビジネスの欠点と美点に気付いて

最高のものをできる限り安くお客様が気持ち良く乗れる形で提供できる。

そういう自転車屋さんだと思います。

まあ、とっても難しいですけどね。

世の中の自転車屋さんの9割は心から自転車が好きだということ。

先ほどの二者に良し悪しをつけることは難しいでしょう。

しかし、どちらのやり方をしていても。

自転車屋さんという仕事をしている人間の9割は自転車が心から好きです。

1割ほど、まあ、単に流れ着いたから、っていう人もいますが。

自転車が好きな人は、自転車の声を聞こうとします。

そんなわけで、

自転車の呼吸が分かる自転車屋さんに

少なくとも年に一度はあなたの愛車を触ってもらうということは

とても大事だと僕は考えています。

まあ、そんなこんなで御座います。

 
 
 

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